中性脂肪という名前はよく聞きますよね。イメージ的には、「あったら困るもの」「悪いもの」といった捉え方をしている人もいるようです。
でも、それはちょっと間違っていますね。もちろん多すぎるのは困りものですが、中性脂肪は私たちの身体になくては困るものでもあるのです。
目次
中性脂肪って何?
結局のところ中性脂肪がなんなのかをちゃんと理解しない限り、自分の身体を正しい状態には出来ません。中性脂肪というのは、簡単に言ってしまえばエネルギー源です。
生きていくためには絶対に必要なもので、食事から摂る以外に肝臓でも合成される物質です。ただ、使い切れる量を超えると体内で貯蓄に回され、皮下脂肪になったり内蔵脂肪になったりするのです。
中性脂肪の数値は「TG」を見る
健康診断の結果を見た時に、「TG」という記号が書かれている場合があります。
実はこれが中性脂肪の略号。
中性脂肪は「トリグリセリド」または「トリアシルグリセロール」と呼ばれているので、TGと表示されるわけです。健康診断で表示される中性脂肪の量は、体内で必要量として使われる分ではなく、余分なエネルギーとして血液中に漂っている分になります。
これは肝臓が取り込んだ脂肪が、使い切れずにまた分泌された量としてカウントされます。
検査前には食事の制限などがありますが、通常10時間から14時間の絶食状態になるはずです。それにも関わらず血液中に余剰分がたくさんあるということは、かなり中性脂肪が過剰な状態だと言えるわけですね。
主に脂質と糖質
中性脂肪は、脂質を小腸から吸収し、肝臓へ運んで血液中へと配分します。また、ごはんやパン、麺類などの炭水化物を摂った場合やアルコールを摂った場合に肝臓の中で合成される分もあります。
脂肪分も悪者扱いされることが多いですが、生命を維持するためには絶対に必要な栄養素ですし、内蔵にもある程度の脂肪がないと、守ったり体温を保ったりすることが出来ません。排除すれば良いというものは決してないことを覚えておきましょう。
中性脂肪の基準値と正常値を解説
中性脂肪には基準値があり、適正な数値であることが健康上求められます。
ほとんどの場合、異常が見られるのは多すぎる状態ですね。年齢によっても変わりますが、大きく逸脱するのはとても危険な状態です。
中性脂肪の基準値
中性脂肪は血液の採取で調べられます。酵素を使って検出した値を調べるのですが、正常な数値は30~149mg/dlです。かなり大きな幅がありますが、現代日本人なら、上限をオーバーするほうが多いでしょう。
食後30分から上昇し、4時間から6時間後にピークになります。正しい値を知るためには、夜絶食した後に朝イチで検査することが多いでしょう。
中性脂肪の判定基準
正常な数値の範囲に収まっていればまず問題ありません。オーバーするような場合の判定基準ですが、日本人間ドック学会では、
30~149mg/dl⇒「正常値」
150~249mg/dl⇒「要経過観察」
250mg/dl以上⇒「精密検査」
となります。
中性脂肪は測定する時間でも変動幅が大きいので、1回の測定では確定しにくいものですから、再検査や複数回の検査を行う場合が多いでしょう。
脂質異常症と高脂血症
数値が明らかに基準を上回っている場合には、脂質異常症、または高脂血症と診断されます。
中年以降でこうした診断となる人の40%程度に肥満が見られ、同時にコレステロール値が高い場合には動脈硬化症や糖尿病なども疑われます。
著しく高い場合には急性膵炎(すいえん)が起こる危険性が高く、早急な治療が必要です。また、中性脂肪値が高い状態が続くことで、心筋梗塞や脳の血管障害が非常に心配になります。
中性脂肪の数値が高くなる原因
中性脂肪が高くなってしまう原因についてまとめてみましょう。普段の生活で何気なく行っていることが深く関係しています。
食事が中性脂肪の一番の原因
食事内容を変えただけで、すぐに30%も中性脂肪値が下がったという人は珍しくありません。それほどに食事内容は大きな原因になります。
最近指摘されている注意すべき食品は「精製された穀物」から出来ている炭水化物で、白米や白いパン、麺、菓子などを大量に食べると、急激にインスリンの分泌を促し、うまく処理し切れなかった分が中性脂肪の原料となってしまうのです。
また、同じように指摘されるのがアルコールや糖分の高い飲料などで、これも代謝される過程で脂肪酸やグリセロールなどの中性脂肪原料となります。
これらを日常的に大量摂取すると、中性脂肪はみるみるうちに上がって行きます。
脂肪も中性脂肪の原因になる?
中性脂肪が増える原因には、確かに動物性脂肪や植物性脂肪が挙げられます。
肉やバターに含まれる飽和脂肪酸、植物性脂肪であるトランス脂肪酸は、確かにカロリーが高いので過剰摂取は良いことではありません。
ただ、中性脂肪は食べた脂肪がそのまま変化するわけではなく、原料となるのは炭水化物やアルコールですから、脂肪分だけを制限するのは間違いです。
医師の中にも揚げ物を控えろとだけ言う人がいるようですが、これはかなり偏ったアドバイスです。必要なのは総カロリー数を減らすことであって、食べる脂肪を削れば良い話ではないのです。
運動不足も中性脂肪の原因に
中性脂肪値の高い人には肥満が多いですが、ほとんど人は運動を行っていません。
中性脂肪は体内ですぐに使われるべきエネルギーですから、消費量の多い人なら多く摂取しても使い切ってしまいます。
同じような食事を同じくらい食べても、中性脂肪を効率良く使える身体の人は値が上がりにくく、うまく使えない人は値が上がりやすくなります。
基礎代謝にも関係がありますので年齢にもよりますが、普段の生活の中でも自分で意識してエネルギーを消費する行動を取ることも大切です。
中性脂肪は放置すると怖いよ
人間は、何か身体に不調が出ると、自覚症状があることが多いですよね。ケガをすれば痛みがありますし、虫歯になれば歯が痛みます。
風邪をひけばダルくなったり熱が出たりしますので、そうなってから初めて対処する人も多いかもしれません。
でも、中性脂肪が高いという場合、本人に自覚症状がある場合はほとんどありません。
自分は健康だと思っているのに、指摘されても何のことやらと思って無視してしまう人も少なくありません。でも、中性脂肪の高い状態は、実はとても怖い状態です。
刻一刻と生命の危機が迫っていると言っても過言ではないのです。
中性脂肪の何が怖い?
中性脂肪が高くなって危険になるのは、まずは血管です。
血管は、心臓が送り出す血液を常に流して続ける大切な器官で、そこが傷ついたり変形したりすることは、生命に関わる重要な問題です。
中性脂肪の多い血液が流れ続けると、血管の内壁にコレステロールなどが溜まって血管が細くなります。
また、流れにくい血液をなんとか流そうとして血管自体に傷がつき、破れやすくなったり、血小板による血栓が出来たり、傷を修復するためにはたらいた免疫細胞の死骸が溜まって動脈硬化が起こったりします。
こうなってもまだ自覚症状はありませんから、放置してしまうといずれ血管が破裂して出血したり、血栓が詰まって壊死したりすることになります。
それが脳や心臓で起これば、生命を奪う病気になります。
中性脂肪を注意するべき年代とは
中性脂肪が基準値よりも高くなりやすいのは、男性では30代以降、女性では50代以降と言われています。過去の日本人のデータ上、脂質異常症が劇的に増えるのが、それぞれその年代になっています。
この辺りの年齢になったら、例え健康診断でギリギリ基準値内に収まっていたとしても、注意を怠ってはいけません。
中性脂肪値だけでなく、善玉コレステロールや悪玉コレステロールのバランスなどにも気を配って、何事もないうちから予防に務めることが重要です。
生活改善で中性脂肪値は改善可能
中性脂肪値が高いのはとても怖い状態ではありますが、絶望する必要はありません。
ほとんどの人の場合、アルコールの摂取を控えたり、運動したり、炭水化物の摂取や脂質の摂取を控えたりすることで健康を取り戻すことが出来る場合が多いのです。
食事を変えるだけで中性脂肪は一気に減らすことも出来ますので、本人がどれだけ自分の身体を大事に出来るか次第と言えるでしょう。